研究概要

本研究について

本研究は「第三世代静止気象衛星群による全球高頻度観測は陸域生態環境理解に何をもたらすか？」というテーマをもとに陸域炭素循環の不確実性を解消し、気候変動の将来予測の高精度化を目指す取り組みです。
具体的には、気象観測が主な用途である複数の新世代型静止衛星に着目し、その仮想的な国際観測ネットワークにより陸域を観測します。それにより全球規模の超高頻度観測を実現し、その利点を生かした陸域生態環境モニタリングを行います。
特に、熱帯雨林帯植生の 変動把握・植生の水ストレス状態の把握・展葉、落葉時期の日単位での把握・数値モデルの精緻化を試み、これまで頻発な雲被覆のためモニタリングが非常に困難であった地域に対して、陸域生態系環境の変動を明らかにします。

本研究の目標

本研究の目標は、ひまわり8号をはじめとする世界の最新の静止衛星観測網を国際観測網として束ねて陸域生態系モニタリングを10分毎といった高頻度で実現することを通して、以下を行います。

・世界の静止衛星を束ねた統一陸面観測データセットの創出
・高頻度衛星観測データを用いた陸域炭素吸収・排出量の不確実性の低減
・陸域生態系に関する重要課題の解明

特に
「熱帯雨林帯植生の変動把握」
「植生の水ストレス状態の把握」
「展葉・落葉時期の日単位での把握」
「数値モデルの精緻化」

研究体制

Ⅰ.地上観測ネットワーク整備班

大気放射、微量成分観測ネットワーク SKYNETより、衛星データの大気補正に利用する入力パラメータの精度検証を行うためのデータを構築します。JapanFlux, AsiaFlux, FLUXNETなどの地上観測CO2・放射フラックスデータで2015年以降のデータを収集します。
​半球分光放射計データと魚眼カメラデータをPhenological Eyes Networkなどから取得し、地表面反射率、展葉・落葉日データとして整備します。

Ⅱ.基盤プロダクト構築・整備班

個別の静止衛星毎に基盤プロダクトとして、雲識別フラグと地表面温度、地表面反射率、反射率の角度依存性補正を計算・作成します。構築プロダクトを検証・改善します。検証は魚眼カメラデータ・SKYNETデータ・JapanFluxデータなどの地上観測データと、他衛星プロダクトとの相互比較を行います 。また米国NASA AmesのNemani博士(協力者)の反射率プロダクトとの相互比較を実施します。

Ⅲ.静止衛星観測網データ統合班

​​静止衛星と極軌道衛星の比較を通したデータ標準化や、 低緯度～中緯度における反射率および植生指数などプロダクトの比較を通した極軌道衛星を媒介した日米の静止衛星の間の相対的な標準化手法の構築を行います。構築された標準化手法をⅡの構築データに適用し、まずはアジア・アメリカで、次にグローバルで統合データセットを構築します。

Ⅳ.データ応用解析班

Ⅱ,Ⅲで構築した反射率データなどを利用して植生指数・緑被率、展葉・落葉時期・葉面積指数、光合成・蒸発散、などを算出します。
​構築したデータセットを利用して、熱帯雨林光合成量やCO2収支の推定モニタリング, 数日単位での植生水ストレスモニタリング, 2-3日程度の精度での展葉・落葉時期の推定を行います。静止衛星から得られた植生の水分に対する応答や展葉・落葉時期、熱帯雨林の知見について、モデル化を行います。

研究環境

千葉大CEReSが誇る日・米・中・欧静止衛星データアーカイブ

２０年以上のノウハウと４０年分のデータ蓄積があります。
陸域観測には必須な、独自の精密位置合わせ技術を持っています。

国際地上RS観測ネットワーク：SKYNET

​プロダクト検証に必須です。
千葉大CEReS主導観測網（アジア、欧州）です。
９０サイト以上あり、そのうちCEReSが１０サイトを占めています。

大気-陸域フラックス観測ネットワーク

​プロダクト検証に必須です。
各国のネットワークデータにアクセスしやすい環境下にあります。

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